4曲入りのEPで、今のところ配信限定のリリースになります。
YouTubeでも無料で聴けるのでこちらから是非。
https://linkco.re/gHrNXazm?lang=ja
現時点で収録曲の「ひとひら」のリリックビデオも公開しています。
これまた久しぶりのブログになりますが、この作品について、
またそれを語る上での、この期間のことをつらつらと書いていこうと思います。
○ジャケットなんやねん
まずみんなが思うことだと容易に想像が付きます。
ご覧の通り昭和歌謡を意識したんですが、昭和歌謡的なものと中身は全然関係ないです。
そもそも今までジャケットの案などは割と人に任せてしまっていたところがあって、
今作は出来る限り自分の力で進めたい気持ちが強くありました。
タイトルはある程度早い段階で決まっていて、偶然ある美術展を見に行った際に、
昭和レコードがいっぱい飾ってあるのを見て、この感じいいなあって。
出オチ的なところはあると思います。後述しますが中身があんまりポップじゃない分、見た目に掴みが欲しいのもありました。
実はここまでも紆余曲折あって、昭和歌謡風にするのが決まっても、
いざとなると「そういう写真」って持ってないし、撮るならある程度納得いく形にしたかったんです。
偶然にも近所に50年くらい続いてるTHE昭和な写真館があって、飛び込んで年配の写真家さんに話を伺ったんですが、
結構な塩対応を受け、心理的に諦めつつありました。今となれば、そりゃいきなりイミフなお客だしなとは思います。
で、もうちょっと落ち着いた感じのジャケット案を作って、知人に見てもらったんですが、
総じて「う〜ん、まぁよくありそう」という感想が返ってきました。
それがこれ。
言われたことが全てすごく納得いくと思いますし、僕もそう思います。無難だし、味とは違う野暮ったさがある。
頭を抱えていたんですが、全く別の案件で我が家に数人集まっていた際にこの話が出て、
「なんとかなりますよ、撮ってみましょう」と言われ、急遽撮影したのが、あの肖像です。
よく見るとシャツのボタンは外れてるし、髪も整ってないし、お世辞にも見栄えはよくないですが、
なんか盛り上がってしまって(他にも色々撮ったけど)これが採用されました。
後は多少アイディアを貰いつつも、題字や配置などは全て自分でやりました。
参考にしてたレコードジャケットなどでは、背景は単色なことが多かったんですが、
最後の最後で上記の風景で夕陽が差していることを思い、組み合わせてみました。
○制作の経緯
そもそも「オリジナル曲を作らねば」という脅迫じみた気持ちは常にあって、
4年前に東京に出てから、その気持ちの増幅と同時に「何を作ればいいのかわからない」という葛藤が続きました。
誰に向けて、なんのために、どんなものを、そんな考えばかりグルグル回って、
断片的なアイディアを出しては途中で辞めてしまうということを繰り返していました。
それがなんとか名残の陽として形になるには3つの大きな要因があったように思います。
1つは、以前ブログに書いたようなフリートラックや依頼を受けての制作、
演奏活動やミックスなど「誰かのための音楽」を続けてきたこと。
自分の音楽的スキルが誰かの力になるのは素直に嬉しいし、その気持ちがまた自分を奮い立たせます。
こういった活動がなければ僕は音楽に対して、無力感ばかりを持ってしまっていただろうと思います。
あと2つはシンプルに、人、です。つまり2人。
ひとりは僕に近い環境で、ちょうどこの制作期間に沢山音楽や、音楽にまつわる話をして、
話せば話すほど「あぁ僕って音楽好きなんだな」と再認識するきっかけになりました。
少なくとも彼に「こういう結果になったよ」というところまでは絶対に進めたい気持ちがあって、ようやくドロップ出来た感じです。
もうひとりは全然別ベクトルの友人で。
僕は顔も知りませんが、1年くらい前にひょんなことから文章のやり取りがありました。
その方もまた別種の創作活動をされており、様々な意見交換をさせてもらいました。
ちょうど行き詰ってた楽曲が、その方に背中押される形で進行して、それをきっかけに今回の楽曲群も生まれていきました。
きっと2人ともそういう影響があった自覚はないと思いますが、
僕はこっそり心の大事なところに置いていたんだなぁと、振り返って感じます。
○楽曲について
収録数4曲。これは自分史上最も少ないものです。過去が多すぎるんだけど。
15曲くらい案があって、進行段階に応じて10以下に絞る考えではあったんですが、
歌詞づくりと歌録りで自分の最低限のクォリティに満たないモノを省いたら4しか残りませんでした。
やっぱり自分自身に対する期待値や評価が厳しくなっているんだと思います。
あとは発表方法の選択肢が増えた影響もあると思います。BGM向きのモノとかね。
そういう「自分の方へ向いた矢印」がテーマになっているのが、
1.「metometometome」です。目と目、me,tomeみたいなミーニングです。
曲先で頭のメロディラインが早々に出来て、タイトルとテーマが自然と決まっていきました。
自分の作品を監視する自分がいて、勝手に色々なものと比べて萎縮してしまって、行動に移せない。
そもモノづくりする人には多作タイプと佳作タイプがいると思っていて、
もともと前者だった僕にとっては、この数年大きな壁となっていました。
だからそんな自分を励ましたい、そういう中身になっています。
曲はここ何年かガッツリハマっているドリームポップ系の気だるい感じ、
一筋縄じゃないシンセリフ、サビがない構成など、個人的に凄く気に入っています。
あ〜僕だなぁって感じの曲になったと思います。
2.「新しいフォルダ(36)」
Windows使いにしかわからないタイトルかもしれません。
フォルダに名前をつけず新規作成していくと、同名にならないようにカッコ内の数字が増えていきます。
36は年齢です。
いつまでも、チマチマとでも、立ち止まりながらでも進んでいきたい、割と前向き。
ややスローな四つ打ちという意味では1曲目と同じようなスタートでしたが、
こっちは少しスマートなイメージで進行しました。
色んな音色が横断していくような構成で、上記のテーマを補完していきました。
3.「ひとひら」
東京もなんだかんだ毎年のように雪が降りますが、ほとんど積もることはありません。
2022年もそういう日があって、その夜は静かに雪が舞っていました。
そのどれもがアスファルトに触れた瞬間に姿を消していく光景がとても心に残りました。
この数年、僕は老人介護施設でアルバイトをしていて。(介護はしてないけど)
終の棲家になる場所ですから、色んな方がいらっしゃるんですが、
やっぱり日々感じることが多い環境ではあります。
そのひとつが「蓄積しない記憶」。あくまでも勝手な感傷ではあるんですけど、
ついさっきのことを覚えていない姿を何度も見て、
それが、溶ける雪の光景と結びついたのでした。
バランスをとるように、楽曲はシンプルでキャッチーなものになりました。
切ない生演奏主体のループにトラップビートを乗っける手法は近年の流行でもありますが、
実際やってみると、とっても気持ちがいい。こういうアレンジを選べたのは、
件のトラック制作や音楽友達の存在が大きいです。
それから、EPタイトルともなった「名残の陽」という歌詞が出てきます。
夏目漱石の行人に「名残の光」「名残の太陽」という表現があって、なんと美しいと感動したのです。
消えゆく光と温度、凄く生命のイメージがあって気に入っています。
4.「あんだぁまいにんぐ」
アンダーマイニング効果という言葉があります。内発的動機での行いに報酬がつくようになると、
モチベーションが下がるという心理的な効果のことです。わかりやすくしましょう。
好きで、やらずにはいられなかった音楽が評価されたり、お金に変わったりしていくなかで、
目的がすり替わり、生み出したい気持ち自体が低減していくこと。はい。
まさに僕が直面していた問題そのものです。
アートを志す人たちには極めて身近なものだとも思います。
陥った人の数だけ解決策があると思いますが、
僕はどちらも諦めないことにしました。お金になる音楽とお金にならない音楽、そのどちらも。
ある意味で苦しい道なのはよくわかっているんですが、
限りある人生であること、自分を見つめる自分がいること、小さくでも進む何かがあること。
お金を通じて誰かの力になること。
思い出のある人に回りくどい手紙を送ること。
全部大事にしたい。
だから礎としてはギター弾き語りのスタイルだけど、
打ち込みを合わせるアレンジで、相反する要素を両立させようと画策しました。
今作を出すまでの苦しい時間を総括し、
またいつか新しい作品を作る時の希望を残す意味で、とても大事な一曲です。
○あとがき
ファー!やっぱり長くなりました。
僅かな楽曲数とはいえ、苦悶する時間が長かった分、リリース出来て安堵の気持ちは強いです。
一方でその期間の長さが楽曲からカジュアルさを抜いたような実感もあります。
今まで以上にパーソナルで、他者を遠ざけるところがある作品なのは実のところ承知しています。
そんな気持ちがあるので、僕はまだ曲を作ることになるでしょう。
諦めないと決めた以上、別にいつでもいいかって気持ちもあるんですけど、
「あの顔」が遺影になるのも嫌なので、もうちょっと老けた顔をお見せ出来ればと思っています。
毎度のことながらここまで読んでくれた奇特な方には心から感謝です。
またいずれお会いしましょう。

